腎臓内科
Nephrology
腎臓内科
Nephrology
急性腎障害は、なんらかの原因で腎機能が急激に低下することをいいます。
厳密には、数時間から数日で腎機能が低下する場合を指しますが、その多くは入院中に発症するため、ここでは、期間によらず一過性に腎機能が低下する病態について説明します。
腎機能は、血液中のクレアチンならびに、クレアチニンから算出されるeGFRという数値で表されます。透析が必要になるほど急激に腎機能が悪化した場合は、老廃物や水分を排泄できないため、疲労感やむくみといった症状が出ますが、軽度や中等度の腎障害では症状がなく、ほかの理由で血液検査をした際に偶発的に見つかることも多々あります。
腎機能が低下する原因は、腎臓の傷害、腎臓への血流不足、尿路の閉塞のいずれかです。腎臓の傷害は、腎炎(急速進行性糸球体腎炎)や腎臓に毒性のある薬の使用で、腎臓への血流不足は、脱水や出血、腎動脈を収縮させる薬の使用で、尿路の閉塞は、前立腺肥大に伴う尿閉、尿管結石、がんの尿管浸潤などで起こります。
腎炎を除き、腎障害に対する特効薬はないため、原因を早期に発見して取り除くことが重要です。治療が遅れると、腎機能はそのまま回復しなくなります。
薬剤性腎障害は、薬が原因で生じる腎障害です。
解熱鎮痛剤やCT検査で使用される造影剤は腎臓に毒性のある薬の代表例で、腎臓が悪い方には使用できません。腎動脈を収縮させるACE阻害薬やARB、脱水を助長する利尿薬も、誤った使い方をすると腎機能を悪化させます。
間接的に腎機能を悪化させる薬には、骨粗鬆症の治療薬である活性型ビタミンDが挙げられます。活性型ビタミンDはカルシウムを増やして骨を強くする効果がありますが、過量投与が原因で高カルシウム血症を来すと、腎臓が傷害され、腎機能も急激に悪化します。
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、慢性的に腎機能が低下する病気です。
CKDを引き起こす疾患は多岐に渡りますが、治療を開始する時期が早ければ早いほど、腎機能の悪化を抑え、透析になるリスクを減らせるため、初期の段階で「腎臓専門医」が介入するメリットは非常に大きいです。
原因疾患の治療と、腎臓に負担をかける高血圧ならびにタンパク質の過剰摂取をコントロールすることが重要です。当院にも多くのCKDの方が来院されますが、腎臓がかなり悪化した状態で来院された場合は治療に難渋することも多いため、早い段階での受診が望まれます。
また、CKDの方は、風邪薬や抗生物質、アレルギーの薬など、ほぼ全ての薬で用量に気をつける必要があります。通常の用量で使用ですると、お薬が腎臓から排泄されずに過量投与となるため、専門医に処方してもらうのが良いでしょう。
糖尿病性腎症は、糖尿病が原因で起こるCKDで、1型糖尿病と2型糖尿病、どちらにも発症します。
HbA1c<7%を保つことが重要で、治療が不十分だと徐々に腎機能が悪化します。新規透析導入の原因疾患として、糖尿病性腎症は最も多く、糖尿病性腎症の悪化を防ぐことは、透析患者を大幅に減らすことに繋がるため、当院でも積極的に治療しています。
腎硬化症は、高血圧が原因で起こるCKDです。
高血圧だけで腎臓が傷害されることは稀ですが、糖尿病や脂質異常症も合併して動脈硬化が強い場合は腎硬化症のリスクが高まります。血圧の不十分なコントロール、過度の降圧、不適切な降圧薬の使用法も、腎臓に傷害を与えます。
当院では、「高血圧専門医」「腎臓専門医」が適切に血圧を管理することで腎硬化症の合併を予防しています。
IgA腎症は、血液中のIgAというタンパク質が腎臓に沈着することで発症する腎炎です。
腎炎の中では緩やかな経過を辿りますが、ほかの腎炎と比べて発症年齢が若いため、新規透析導入の原因疾患としては、糖尿病性腎症に次いで2番目に多くなります。
診断は、腎臓に針を刺して組織を採取する腎生検で行われます。若い方の検尿異常は、IgA腎症の可能性が高く、早期の治療で腎機能を低下させないことが重要です。検尿異常がある場合は、早めに受診することをお勧めします。
多発性嚢胞腎は、遺伝的に肝臓と腎臓に嚢胞(水の袋)が出来てしまう病気です。
健康な人でも1個や2個は嚢胞ができますが、多発性嚢胞腎では多数の嚢胞ができ、正常な肝臓と腎臓の組織を圧迫して機能を低下させます。また、嚢胞は徐々に大きくなるため、最終的には腎機能がなくなり透析治療が必要となります。
多発性嚢胞腎を完治させることは出来ませんが、嚢胞の成長を遅らせる治療が有効とされています。
腎臓が機能しなくなると、身体の老廃物を尿中に排出できなくなります。老廃物の蓄積が限界を超えてしまうと身体に様々な異常をきたしますが、それでも治療を受けずにいると命を落とします。
透析は、腎臓の代わりに老廃物を除去するシステムで、全国で30万人以上の方が「生きるために」治療を受けています。その大部分を占める血液透析は、週3回通院する必要があるため、透析になってしまうと、それ以前のライフスタイルを取り戻すことが非常に困難となります。最近では、自宅で透析をする腹膜透析や在宅血液透析も注目されていますが、日常生活に制約を受ける点は同じです。
透析にならないために必要なことは、腎疾患の早期発見ならびに適切な治療以外ありません。当院では腎疾患が疑われる方に対し、血液と尿検査だけでなく、画像検査で腎臓の細かい部分も確認しています。また、すでに腎疾患をお持ちの方についても、きめ細やかな管理で機能低下を抑え、透析を回避できるよう全力で治療しています。
血液透析とは、腎臓の代わりに機械で血液を循環させて老廃物を除去するシステムです。
血液を体外循環させるためには、採血で使用する静脈ではなく、勢いよく流れる動脈血が必要になります。しかし、動脈は奥深くにあり硬いため、毎回針を刺すのには不向きです。そこで血液透析を行う前に、動脈と静脈を繋いで動脈血を静脈に流すシャント手術をする必要があります。